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ヒカシューの20世紀ベスト1枚目

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ヒカシューというバンドが結成されて40年が経った。その1978年私はまだ中学生だったので、レコードの出ていないバンドの存在など知る由もなかった。そのベストアルバムがきょう発売されたので、聴いていく。

1「レトリックス&ロジックス」

たぶんこれが私が初めて聴いたこのバンドの曲。デビューアルバムの1曲目に入っている。中3のころ同級生の榎本君の家に行って、聴かされたカセットテープの2本のうち1本が「ヒカシュー」だった。もう1本は「クイーン」だったと思う。当時FMで、発売されたばかりのLPをまるまるかけるという番組があってそれを榎本くんがエアチェックしたものだった。「これが最近流行っている新しい曲だ」というニュアンスでの紹介だったと思う。

ピコピコというシンセサイザーの音で始まり、どちらも不可算名詞なのに複数形になっている抽象語の歌詞がつづく。(ほかの歌詞のパロールとかロゴスとかフレーズとかはちゃんと単数形なっている)たぶんこの曲を初めて聴いたときはそれほど感慨はなかったと思う。それでも投げやりなサックスなどがいい。初期のメンバーでは戸部さんがサックスを吹いている。

この曲はその後ライヴでも頻繁に演奏された印象がある。近年では、前奏は口琴で演奏される。録音には入っていないはずのその口琴の音が聞こえる。そう、このアルバムは聞こえない音まで聴こえるのだ。それは40年の音源やライヴの記憶を呼び醒ますからだ。それを引き起こすだけの選曲と曲順になっている。

2「20世紀の終りに」

言わずと知れたデビューシングル。私は最初からアルバムで買ったのでシングル盤は聴いたことがない。テレビでもよく歌っていた。

初期のヒカシューは巻上さんのベースヴォーカルなのだけど、テレビに出たときにベースを弾かないで、なにか石鹸箱大の物を持って頭にぶつけて音を鳴らしていたことがあった。司会者に「それはなんですか」と聞かれて「シンセドラム」と答えていた記憶がある。叩くとびょーんという音が鳴るのだった。

合いの手の奇声はメロトロンだろうか。近頃のライヴでは三田さんのコーラスで表現される。最初の「イヤヨ」は巻上さんだけれど、「1978」所収のデモバージョンではその前に「いいだろ」という声も録音されている。

サビの「声をあげて」「頭を使って」のところ、ライヴでは全員で人差し指をかかげて「ハイハイハイ」とレスポンスする。

3「ドロドロ」

ここにこの曲を持ってくるところが心憎い。シングル「20世紀の終りに」のB面。でも私はこれは「ヒカシュースーパー」というアルバムで初めて聞いたはず。そのアルバム自体は1981に出ているようだけれど、私が入手したのは多分もっとあと、80年代半ばに中古レコード屋で見つけたのだったと思う。しかし一方で高校生のころにギター弾き語りで歌っていた記憶もある。もしかしたらシングルも持っていたのかもしれない。

曲調が特撮っぽいのは井上さんの作曲だからだろう。

4「プヨプヨ」

初期のテーマ曲とも言える曲。変拍子、メロトロンによる効果音、不気味なヴォーカル。合いの手に「ヒカシュー!」とバンド名が入る。ライヴでは三田さんの変なパフォーマンスも入る。

5「幼虫の危機」

さらに狂気が促進する。「楽しいな 人間も死ぬなんて」こんな歌詞ほかで聞いたことがなかった。たぶん最初はこの曲にいかれたんだと思う。「歌」が(大切だとしても)中心ではなく、演奏が主体のバンドなんだという印象も「プヨプヨ」とこの曲で抱いたと思う。

6「白いハイウェイ」

これもシングルだけの曲だったけれど、テレビCMに使われていたのでよく聞いていた。そう、ヒカシューの曲がそのままCMに使われていた時代があったのだ。このベストには収録されていないが「オアシスの夢」なんかもそうだった。

狂気を感じさせるバンドなのに、テレビでも流れているからというエクスキューズで聴いていたようにも思う。

7「アルタネイティヴ・サン」

たぶん高校生のころ最もよく聞いたのがこの曲だった。2枚目のアルバム「夏」の1曲目。海琳さんのギターリフで始まるのがカッコいい。多分この曲で私は三田さんの大ファンになったのだ。いまでもライヴのときは、三田さんの真正面に陣取る。そうするとサービスで手の届く距離でギターソロを聴かせてくれたりする。

当時は「アルタネイティヴ」の意味がよくわかっていなくて「ネイティヴ」からの印象で「原初の」という感じかと思っていた。ほんとうは「オールタナティヴ」で「二者択一」という意味だと大学生のころに知った。そういうジャンルの音楽があるのだと。

巻上さんのソロアルバム「民族の祭典」に別のアレンジで収録されていて、その曲調からのイメージだったのかもしれない。

ラストのヴォイスのハナモゲラが最凶である。

8「パイク」

「20世紀の終りに」とならぶ初期の有名曲だけれど、確かシングルカットされていない。映画に使われたりベンチャーズと共演したりテレビで演ったりして有名になったのか。

歌詞は少なく繰り返しで、やはりインプロヴィゼーションの要素が色濃い。その点では「プヨプヨ」の流れであるとも言えそうだ。

「夏」に収録されている録音では、ベースラインが不気味で当然あのころは巻上さんが弾いていたわけだけれど、ライヴでやる坂出さんのベースはノリノリである。「パイク」にはいくつものヴァージョン違いがあって、英語版もあるのだけれどなんとなく韓国語っぽく聞こえるのはなぜだろう。

先日ライヴ終りに、巻上さんに聞いたところ、この歌詞はアルフレド・ジャリの詩から着想を得たという。ジャリの「馬的思考」という本をパラパラとめくってみたら「溺死体」の話がちょっとそれらしい。

9「マスク」

この流れの曲に「炎天下」や「スイカの行進」があると思うのだけど、今回は収録されていない。「炎天下」は、メジャーデビューするときに歌詞を変えさせられたという因縁がある。デモ版「1978」では元通りの歌詞だし、ライヴではそのもとの歌詞で歌う。「スイカの行進」は夏のライヴではかなりの確率でやってくれる。

「マスク」のブレークは後の「びろびろ」にも通じていると思う。これも一種のインプロヴィゼーションであると解釈できる。

あれはなんの時だっただろう。インフルエンザが流行ったか何か(違う。放射能よけだった。そういえばヒカシューにはクラフトワークの「放射能」のカヴァーがある)で、みんなマスクをするようになった。そのうちおしゃれで付けるようになった人もいたけれど、表情を隠すためというのも大きな理由の一つだったと思う。その魁がこの歌の歌詞になっているので、その頃よく歌われた。「マスクをつけて・・・これで安心・・・」

10「ガラスのダンス」

悪名高い加山雄三主演のテレビ版「ブラックジャック」のエンディングテーマだったから、放映時に聴いている。CDには入っていないけど「ブラックジャック!」というシャウトが曲の前にあったような気がする。記憶違いかもしれないけれど。そうだとしてもこのアルバムを聴いているとそういう音も聞こえるのだ。過去と未来。捏造された記憶と不幸な夢。それらすべてを包含するのがこのアルバムだといっていい。

11「うわさの人類」

高校生のときヒカシューのアルバム「うわさの人類」と巻上さんのソロアルバム「民族の祭典」をカセットテープの両面に録音してオートリバースにして聴きながらソファで寝ていたから、もう無意識の層に染み込んでいるだろう。

「光新たな未来像」というところは横浜だかの市歌からとったとライヴのときに言っていた。

12「出来事」

13「予期せぬ結合」

海琳さんの作曲と山下さんの作曲。ひところライヴのはじめの方でロック調のノリの良い曲を連続して演奏していて、それがこの二曲や「レトリックス&ロジックス」や「アルタネイティヴ・サン」だった。最近あまり演らないのは、新しい曲でノリの良い曲が増えたからだろう。

この1枚目は山下さんの作曲が多い。山下さんと戸部さんは「うわさの人類」と「日本の笑顔」の間に脱退した。ドラムの泉水さんはアルバムで言うと「うわさの人類」だけだがテレビにもよく出ていた。そのあとヤプーズという戸川純のバンドに加入した。ヤプーズのあとはしばらく活動していなかったようだけど、最近はジョリッツという新しいバンドでドラムを叩いている。

14「日本の笑顔」

4曲入りのミニアルバムという体で発売された。このあたりからベースの坂出さんが加入して、巻上さんはヴォーカルに専念する。ギター、ベース、シンセ、ドラムスというシンプルな構成になっている。

コーラスで戸川純が歌っている。このアルバムを聞いたときはもう戸川純を知っていたような気がする。「玉姫様」を既に聞いていたのではないだろうか。調べたら同じ年の発売だった。なにかのインタビューで「このコーラスは誰」と聞かれて巻上さんが「戸川純という女優さん」と答えていた憶えがある。

つい数年前クリスマスライヴでの共演が叶ったけれど純ちゃんと巻上さんのデュエット曲は「おおブレネリ」や「神聖ムー帝国」とか結構ある。

15「水に流して」

「日本の笑顔」の後に出たアルバムで、その後二枚は合体してひとつのCDになった。もともとその予定が、諸事情で別々にリリースされたものだったらしい。

このあたりからドラムスが谷口さんになり、サックスの野本さんが加入して、音に厚みが増す。野本さんは既にフリージャズで台頭していたひとだった。私が学生時代よく渋谷のエッグマンに聴きに行っていた当時はこの編成だった。

16「魅惑のペイブメント

余韻を残す曲。これで1枚目が終る。結構紙数を費やした。2枚目は今聴き始めたところ。

ヒカシューを聴いて成績は上がるか。たぶん上がると思う。何かを感じ、物事を考えるようになるからだ。