最後から二番目のセンター試験の国語の文章に思う
先の週末に、大学入試センター試験が行われた。
国語の問題では、古文の問題に異色の物語が登場したと話題になっているけれど、なかなかセンスのいいところを見せたと思う。
その話題の古文の文章は、狐が少女に化けてお姫様に仕えるという、異種交流譚のひとつ。
それより現代文の最初の問題でびっくりした。翻訳についてのエッセーだが、どこかで読んだことがあるなあと思ったら、翻訳家の沼野充義さんの文章だった。
えー、沼野さんをご存知でしょうか。実は私はポーランドの作家のスタニスワフ・レムが好きで、翻訳で読んでいるのですが、その多くの翻訳を手がけているのが沼野さんだ。レムの代表作といえば「ソラリス」で何回か映画化もされているし、こないだテレビの「100分で名著」とかの番組でも取り上げられて、たしか沼野さんが解説役で出演したのだった。
どちらかというと私はレムの作品では「完全な真空」とか「虚数」とか言った架空の書評集などのメタフィクション系が好きなのだけれど、沼野訳の「ソラリス」も感動した。以前はおそらく英語版からの翻訳が出ていたのだと思うけれど、これはポーランド語から直接訳されたもので、省略されていた部分も含めた完全版だった。
レムはまだ何冊か読んでいないものがあるので、今読んでいるナボコフのあとに読むことにしたい。
もうひとつの現代文の出題は、上林暁の私小説だった。今の高校生にはちょっととっつきにくかったのではないか。ここに出てくる友人は伊藤整だろうか。