2019年に読んだ本のベスト(1~3月)
去年はつらい年だった。別れが続いた。でも、本を読んでいるときだけは心安らかだったのだと思う。
それでも読んだ本は多くない。83冊+マンガ13冊。漫画を読んでない理由は節約のためと言うのが大きいかも。小説などは買わなくても図書館で読める。
5段階で評価しているので、5をつけているものを上げていく。
(※印のものは当塾で貸出可)
「早朝始発の殺風景」青崎有吾 ※
新年の読書は、この青春ミステリの傑作から始まった。年末に読んだ「本と鍵の季節」(米澤穂信)と対をなす。高校生たちの甘くて苦い青春と謎。
「創作の極意と掟」筒井康隆
座右の書として置いているが、ほとんど読み返していない。創作するだけでなく、読書をするうえでも重要な内容が書かれている。
「ボスたち」バルガス=リョサ
読み逃していたのをようやく読んだ。リョサ節は懐かしいくらいだ。
マンガのドラえもんは昔読んでいたがそれほど印象に残っていないが、私より少し後の世代にとっては共有知のひとつになっている。それを直木賞作家辻村深月が書くとどうなるか。素直に楽しめる傑作になっている。映画は見ていない。
「怪盗ニック全仕事6」ホック
価値のないものしか盗まない怪盗ニックのシリーズもこれで完結。シリーズ物の短篇ミステリを得意とする作者の生んだ最大のスターもこれで見納め。全作品を翻訳・集成されたことには大きな意義がある。ハウダニットとホワイダニットを「怪盗」と言う線で結んだ本格ミステリ。
既にサム・ホーソンものとサイモン・アーク物は完結しているが、大物ではレオポルド警部シリーズが残っているので次はこれが出ると嬉しい。ジェフリー・ランドものも出してほしい。
原書で読めよと言う声もあろうが、実のところ本国でもEQMMなどに載ったのち、本にまとめられていないものが多い。日本語で一番まとまって読めるのだ。
「あきない正傳 金と銀 六」高田郁
江戸時代に女性が商人として活躍することの困難さと、それを打ち破っていくことの痛快さを描いている。実はこの作者の作品はフェミニズム時代劇ともいえる新ジャンルである。次の七巻は二月ころに出るらしい。
「キャッツアイ」フリーマン
古いミステリで今でも好んで読むのが、ソーンダイク博士の事件簿。科学捜査のはしりで、いまとなってはもちろん捜査方法は古いんだけど、その科学精神はすばらしい。
珍しく活劇要素もある傑作。キャッツアイと言うのはもちろん宝石の名前。
読み続けているマンガの少ない例。この味わいは何物にも代えがたい。単なる「泣かせ」でも「あるある」でもないのに、感動してしまう。軽すぎも重すぎもしないそのまなざしに要因があるのかも。
「ねこの小児科医ローベルト」木地雅映子 ※
絵本。子供向けと言うより親向けなのかもしれない。作者自身の経験を踏まえて、それをネコ小説に昇華している。この作家の新作もまた読みたいな。
「SFショートショート傑作セレクション・未来編」 ※
「SFショートショート傑作セレクション・ロボット編」 ※
今は懐かしい日本SFの傑作を収録。中学生辺りに読んでほしい。心の揺さぶりとリテラシーが未来を作る。
「アウシュビッツの図書係」イトゥルベ ※
辛いときに心のよりどころとなるものは「図書」であることを如実に表している。アウシュビッツ絶滅収容所のようなあまりにも過酷な状況は、もはや昔話ととらえられかねないけれど、今の日本がそうなりつつあるのもまた事実だ。
以上1~3月分