2019年に読んだ本のベスト(7~9月)
後半に入ります。※印は塾内貸出可です。
「ビビビ・ビ・バップ」奥泉光 ※
同じ作者の「鳥類学者のファンタジア」の続篇と言えばそうなんだけど、ずいぶん趣が違う。VRやロボットや猫が乱れ飛んでの大スラップスティック。しかし肝要なところはジャズ的に押さえているという快作。
「想像ラジオ」いとうせいこう ※
連載していたのは知っていたのだけれど、こういう作品ではないと思っていた。当事者でなくても語れるのか、と言うことをメタフィクションと言う実作で示した傑作だった。震災後の純文学の在り方として、多和田葉子の「献灯使」と双璧。
「ダブ(エ)ストン街道」浅倉三文
これももっと違う作品と思っていて、読まずにいたのをようやく読んだ。ありえない場所にこそありうべき世界はあるという永遠のテーマを、具体的でありながら超抽象的に描いて見せる。しつこくしつこく彫りこんでいった世界像の先にこそ、センティメンタリズムが存在しうる。
「世界のすべての七月」ティム・オブライエン
これも落穂ひろい。ヴェトナム戦争をリアルにした功績大の作家が、それ以降の大人たちの生き方を思弁してみせた。人生の黄昏を迎えた私にとってはもう過去の世界なのだけれど、やはり生の意味を考えざるを得ない。
「リトル、ビッグ」ジョン・クロウリー
さらにファンタジーの大傑作の落穂ひろい。なんで今まで置いてたかなあと思うほどだけれど、いま読めて幸せだともいえる。現実の地繋がりにこそ幻の世界は存在する。そしてそれは言語によって描きうることを証明してみせた。
以上9月末まで