基塾長の成績の上がるブログ

名張市内で唯一無二の新型「自立教室」を開塾

2019年に読んだ本のベスト(10~12月)

 

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10月以降 ※印は貸出可

「Iの悲劇」米澤穂信 ※

敬愛する作家の最新作。IはIターンのIであると同時に、ある仕掛けにも引っかかっている。ミステリとしては、真の名探偵は実は・・・というパターン。ミステリに文学の力を与え続けている第一人者の新しい成果である。

「シンコ・エキーナス街の罠」バルガス=ジョサ

ジョサの作品がどんどん翻訳されてうれしい限り。暗黒街と政治がテーマ。語り口はいつものように鮮やかとしか言いようがない。

ゆるキャラの恐怖」奥泉光

この作者の中の最もお茶らけたシリーズなんだけれど、実のところサタイアの塊だったりする。去年大問題になった教材会社(この小説の中ではペネッセとなっている)と政府の癒着がここですでに描かれていることに驚く。貧困問題も。

「奇跡の経済教室」中野剛志

珍しく小説以外のものを。え、だって中3で習うやん? なんて思うわけだけれど、こんなことも分らない人が国の中枢を担ってるってんだから大したもんだ。

「ツナグ 想い人の心得」辻村深月 ※

映画にもなった大傑作の続篇。この設定があれば、いくらでも書けるはずなんだけれど、大事に大事に書き継いでいるのが分る。冒頭でいきなり「え?」となるが、実はこれは登場人物紹介だった。あと「〇〇がない」話しもあって、テーマが深化している。

「キャットニップ3」大島弓子

綿の国星でつかまって以来(本当はそれ以前から)の長い付き合いなんだけれど思えば遠くへきたもんだとの感に堪えない。猫をはじめとする動物たちを人に見立てて書き始めたときはメタフィクションの新しいやり方だと快哉を叫んだものだけれど、あの頃この作者はまだネコを飼っていなかったはず。付き合いが深くなればなるほど猫は猫として描くしかないということになってきたようにも思う。この巻では、老いと死が大きなテーマになっているだけに身につまされる。

「イヴリン嬢は七回殺される」スチュアート・タートン

あまりにもややこしいミステリと言われているけれど、私にはそうでもなく、むしろこの設定がワクワク感をもたらした。ただし、折り返しについている部屋割り表にメモを書きながら読むくらいはしないと理解できないだろう。

「ゲームの王国」小川哲

SFだと思って読み始めたら、上巻はマジックレアリスムで、下巻はメタフィクションだった。つまり大好物。そしてラストがいい。これしかない。

おおきく振りかぶって32」ひぐちアサ

リアル高校野球小説として始まったこのシリーズを読み続けているのは、常に新発見があるから。野球以外も楽しい! と言うキャプションが言い得て妙だ。イイネ青春。

「さらにいくつもの映画のこと」こうの文代・片渕須直

映画「この世界の片隅に」の原作者と監督の対談。え、そうだったのと言う新発見が原作にも映画にもまだまだある。原作は元々読んでいたのだけれど、三年前の映画化のときにやっと気づいたこともあったし。メイキングの映画も見てきたが、「さらにいくつもの」ヴァージョンはまだ見ていない。いつ行けるかな。

「至高の妄想」巻上公一 ※

私淑しているミュージシャンの「はじめての詩集」元が歌詞だけに、歌が聞こえてくるかと思いきや、全く違うものが聞こえて来た。素晴らしい現代詩集と言える。

以上で去年は終り。