基塾長の成績の上がるブログ

名張市内で唯一無二の新型「自立教室」を開塾

ヘロンの公式のスモールsってどういう意味でしょうか(誰か教えてくださいm(_)m)

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高一の冬休みの宿題でやってた、3辺の長さが分かっている三角形の面積を求める問題。だいぶ前に習ったところなので、知っているはずなのにどうやら忘れているみたいで、解答を見ながらやっていました。

三角比の単元なので、余弦定理や正弦定理を使って求めるように書いてありましたが、ヘロンの公式を使うともっと簡単に解くことができます。

ところでこの公式の小文字のsがどういう意味なのかよくわかりません。

いや、3辺の和の二分の一ということも分かるし、証明もわかるし、解き方もわかるんです。でも、なぜ小文字のsを使うのかわからないんです。

大文字のSは、スクエアの略で、面積ということです。三角形の辺の長さはふつう小文字でabcと書くのは単にアルファベットの最初の3文字ですよね。

小文字なのは長さだから、そして面積と区別するためということなんでしょうが、なぜsを使うのかがわからないんです。総和のシグマの意味なんかなあとか考えますが、それだと二分の一になるはずです。公式に入れたときに1/2がついていたらめんどくさいからだとも思いますが、それでも確かになぜsなのか分かりません。誰か教えてくださいませんか。(ヤフー知恵袋で聞けって?)

ところで同じような問題が高校入試にも出ていたんですが、中学校では三角比を習わないので、三平方の定理で解きました。計算が非常にめんどくさいです。

やっぱり公式や定理を覚えておくと楽に解けるんですね。

安心してください。新聞記者も英語が読めません。

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当塾では「冬のプレミアム学習会」真っ最中です。きのうものべ11人の生徒さんたちががんばっていました。

高校受験対策のため過去問に取り組んでいる生徒たち。なかなか英作文ができない生徒がいます。問題文に「弟(her brothe)を紹介する」と書いてあるのに「I」を主語にしてしまっています。それはまだいいのですがいきなり「They」が主語になったりしています。正解は「He taught math for me yesterday.」でした。なかなか難しい構文です。

me の前に来るのが to なのか for なのかわからなかったらこの方がいいかもしれません。「He taught me math yesterday.」

英検4級を目指す中学生。一年生なのでまだ学校で習っていない文法が目白押しです。でもなんとかヴォキャブラリーをつけて乗り切ろうとしています。

ところで、FBのMLBのグループに属しているのですが、そこで問題になった記事がありました。

マリアノ・リベラ氏野満票で野殿堂入りならず…米記者 クローザーの過大評価を指摘し票入れずと明かす(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース

スポニチの記事のようです。「バルー記者は決してリベラ氏の満票での殿堂入りを拒んだわけではないとしながらも、公平を期するためにすべての候補者に票を入れず、“白票”としたと記事は結ばれていた。」

詳しいことは省きますが、MLBの殿堂入りは75%以上の投票で決まります。今年候補になっているマリアーノ・リベラが、もしかしたら満票で当選するのではないかと言われているのですが、この記者が「白票を入れる」といったので「満票にはならない」というのがこの記事の趣旨のようです。

しかしこの記事の元ネタを読むと・・・

Bill Ballou: Mariano Rivera not getting this writer's Hall of Fame vote - News - telegram.com - Worcester, MA

「Thus, I’m not voting this year. A submitted blank ballot is “no” vote for every candidate, so I’m doing a Switzerland and not sending one at all.」と書いてあるんですね。

これを翻訳機にかけると「したがって、私は今年投票していません。空の投票用紙はすべての候補者に「賛成」投票であるため、私はスイスで投票しますが、まったく投票しません。」となりました。ひ、ひどい訳だ・・・スポニチの記者は翻訳機を使ったのかもしれません。少なくとも原文をちゃんと読めてはいません。 “no”を「賛成」と訳しているのがびっくりしますが、さすがにこの部分だけ翻訳機にかけるとちゃんと「反対」と出ました。全体ではなく、部分的に翻訳機にかけてみることも大切ですね。そこだけ修正すれば、この翻訳でもおおよその意味は取れます。「私は今年投票していません」「まったく投票しません」と書いてあるわけですから、投票自体しないのだと分かるはずです。それを「白票」と捉えたので、変な記事になってしまったのでしょう。

あと、この表現が面白いですね。「 I’m doing a Switzerland」翻訳機はこの「do」の動詞を「投票する」と訳していますが違います。また「a Switzerland」を「スイスで」と訳していますがこれもちがいます。「スイスで」なら「in Switzerland」になるはずです。中学生たちにも「国名の前は in」と教えています。まあ「to」のときもあるんですが・・・。このスイスの前の「a」は、不定冠詞です。つまり「スイス」を固有名詞ではなく一般名詞として扱っているわけです。おそらく比喩的な慣用句でしょう。スイスってどんな国ですか? 「永世中立国」ですね。だから「 I’m doing a Switzerland」は「中立を決め込む」でいいのではないでしょうか。

たかだか野球の記事ですから、多少間違っていても大勢に影響はありません。でも政治的な記事だったら大変なことになります。やはり原典に当たることはとても大切です。

私はMLBの記事は基本的に英語で読んでいます。そのほうが情報が早いですし。今後は「情弱」の意味が変わっていくような気がします。

ヒカシューの21世紀ベストの二枚目

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昨夜はヒカシューのクリスマスライヴでしたが、私は行けませんでした。数年前までは毎年のように行っていたのでしたが、このところ行けていません。

ということで数日おいて21世紀の二枚目に入ります。

1「筆を振れ、彼方くん」

トップにふさわしいノリのいい曲。オープニングインプロに続けて清水さんのキーボードの前奏からこの曲に入ることが恒例になっていた時期があった。曲終りで、歓声や指笛が響き渡るのだ。

2012年のアルバム「うらごえ」に入っている曲だけど、その前から何度かライヴで聴いたことがあるような気がしている。「アリの歌」という認識だったが、実際に歌詞にアリは出てこない。「足」とか「虫」とかは出てくるので、その辺でそう思い込んでいたのかもしれない。

野外ライヴで「雨よ雨よ降れ降れ」という歌詞のところで、本当に雨が降り始めたという伝説もある。

2「なのかどうか」

2013年のアルバム「万感」のテーマ曲。サビと言っていいのかどうかわからないけれど「なのかどうかどうかしたか」という歌詞のところの畳み掛け方が好きで、つい口ずさんでしまう。

3「うらごえ」

タイトル通り裏声で歌う部分がある。アルバムが出る直前の大阪のライヴではじめて聴いた。その前日別の場所で聞いたという他の客から「すごいですよ」と耳打ちされた。新境地を打ち出した感があった。このあたりからバンドが爛熟して過去最高のメンバーだと思えるようになってきた。

大阪でのライヴは客が入らないという時期がしばらく続いたころだった。最近はだいぶましになってきたか。解説を書いている田中啓文という作家も大阪在住で、大阪でのライヴのときはよく見かける。

4「にわとりとんだ」

ヒカシューらしい遊び心に富んだ曲。アルバムではヴォイスは巻上さんだけだけど、ライヴのときは全員でニワトリの声を演奏する。短い曲で、いつ終ったのか分からないとも評される。

5「ニョキニョキ生えてきた」

ライヴでもよくやる曲で、ロシアで大受けしていたけれど、個人的にはライヴでこの曲を聴くのはあまり好きではない。なんとなく歌の部分とインプロの部分のバランスが良くないような気がするからだけど、CDで聴くとすごく良く感じる。「お腹が空いても空気が変でも」貧困と災害の日本を歌っているのだと思う。

6「マグマの隣」

清水さんのピアノから始まる曲であり、「筆を振れ、彼方くん」の後釜としてオープニングの後によく演奏されるようになった。もちろん「地震列島日本」を歌った曲である。

7「生まれたての花」

しっとりと聴かせる曲でもあるし、硬い乾いた印象を与える曲でもある。東北大震災直後の心情を歌っているのだと思われる。

8「夕方のイエス 朝方のノー」

タイトルに「イエス」が入っているのでキリスト教の歌とよく間違われるらしいけれど直接の関係はないとのこと。

朝方は「ノー」だったのに夕方になると「イエス」に変節するという意味だと思う。

私はこの曲を聴くと涙がこぼれる。歌の部分と真ん中のインプロの部分の取ってつけた感がよりバランスを感じさせるのはなぜだろう。

9「もしもしが」

「もしも」と「もしもし」の区別がつかないという曲。語り方による意味の伝え方。ライヴでサックスの音で電話の切れる音を表現したと言われているのは、坂田明さんだったか。現場に居合わせなかったのが悔しい。

坂田さんもときどきゲストで演奏する。巻上さんとのつながりは映画「風の歌をきけ」以来のようだ。巻上さんが「鼠」坂田さんが「ジェイズバーのマスター」だった。

モグラモグラ」「カラスはカラス」というところが好きで、これもつい口ずさんでしまう。

10「あんぐり」

雑誌「ユリイカ」の短歌特集号に載った短歌が歌詞になっている。だからすべて五七五七七になっている。イントロの坂出さんのベースもそうか。「あんぐり」というタイトルには "ANGRY" という意味もかけられているのだろう。2017年のアルバムタイトルとなっている。

11「メロンを鳴らせ!ベルーガ

インプロヴィゼーションの曲。タイトルの意味はわからない。

12「テングリ返る」

「テングリ」というのはモンゴル地方の山の神様の呼び方らしいが、厳密には神様ではなく、中国に伝わった「天」の語源でもあるらしい。

途中で曲調が変わるのはなぜだろうと思っていた。巻上さんの歌詞を元に、坂出さんと三田さんが別々に曲を書いてきて、どちらも良かったので混ぜたということらしい。どちらがどちらの曲かは判断できないでいる。

「風には足が生えている」「足には影が生えている」「影には音が生えている」何とも言えない詩情を感じる。

13「了解です」

「了解です」という言葉は日常生活ではあまり使わないと、巻上さんが言っていたけど、関西では割とよく使うように思う。ゲストヴォーカルで吹雪ユキエとあふりらんぽが参加している。

14「いい質問ですね」

タイトルは私の嫌いなキャスターの言葉らしいけど、内容はAIと人間の相克を歌っている。「グローバルシティの憂鬱」や「デジタルなフランケン」につながるテーマでもあると思われる。

15「至高の妄想」

この曲をラストに持ってきたのもものすごくいいと思った。2017年のベストテューンだろう。

中程のロシア語のリフは「黒の正方形」と「白の正方形」を表している。ロシアアヴァンギャルドの作品が元になっている。

 

おでんは苦手…結果を得るには時間がかかる

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きのうはおでんを作りました。実は私はおでんを作るのが苦手です。どこがどう苦手かというと、つい味が染み込む前に食べてしまうのです。

きのうは午後から塾でしたので、朝にタネを仕込んでひと茹でしました。昼ごはんは違うものを食べて、火を止めて放置。

夜帰ってきたらちょうどよく味がついていました。

おでんのタネに味が染み込むのは、実は煮ているときではなく、煮た後に温度が下がっていくときなので、私が仕事をしている間に出来上がっていたということです。

さて、各中学高校ではきのうから冬休みに入りましたので、生徒たちが通知表を持って来てくれます。

中1の生徒のものが壮観です。ほぼオール5で、上からずらっとAが並んでいます。

やっぱり塾には中1から来て欲しいのです。

小学校のとき余り勉強していなかったとしても中1から正しいやり方で勉強すれば、そんなに学習時間をかけなくても、好きな高校に行けます。

ところが中1の成績が悪くなってから来られると、時間がかかります。成績が悪いということは、勉強してないというのもありますが、間違ったやり方が染み込んでることが多いからです。

それを治すのに時間がかかるわけです。

たとえばワークをやって間違えたときですが、単に赤で解答を写すだけで終わってる人が多いのです。

なぜ間違ったか、どうやったらできるようになるのか、確認して覚えるというのができていないと成績は上がりません。

さっきのおでんの話と同じで、味が染み込むのは冷めていくときなので、すぐにできるようにはなりません。

正しいやり方で、じっくり勉強していくべきなのです。

高校生でなかなか通知表の成績が取れない生徒がいます。中学のときよりも勉強していると言います。

中学校のとき5が取れたからといって、高校で9や10が取れるわけではありません。

科目も増えていますし、難易度も格段に上がっています。おまけにライバルは同じ高校入試を勝ち抜いて来た生徒たちなのです。

期末が思ったように上がらなくて暗くなってる生徒と、話をしました。もう、勉強のやり方なんか話しませんでした。

夢を語り合いました。

ちょっとでももっと勉強してくれればいいのですが。

でも、顔が明るくなっただけでも話して良かった。

 

冬至には柚子湯につからう(エアーコンディショナーの謎)

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今日は冬至です。冬至にはゆず湯にゆっくり浸かって温まるのがいいですね。ふだんはシャワーばかりなのでたまには湯船に浸かりましょうか。名張の湯にでも行きましょうか。

本日の運勢は「欲しいモノが手に入る」ということで、いま欲しいのは「レコードプレイヤ」ですね。一万円以内で売っているので買いに行ってもいいんですが。

さて、昨夜の塾でのこと。

英語の学習をしていた高一生が「エアーコンディショナーって何?」とて。

私は黙って、写真のあたりを指さしました。それをずーっと目で追って「エアコン?」

「その通り!」

「エアは空気か! コンディショナーってなんや?」

「コンディションを整えるものってことやね」

「コンディションって何?」

「今日はコンディションがイイとか悪いとかって言わない?」

首をかしげている。

「まあ、状態ってことやね」

「ああナルホド。空気の状態か」

「温めたり、冷やしたり、湿度を上げたり下げたり、空気の状態を調整するものがエアコン」

「略すから! 最初から略さないで言ってくれたら覚えられるのに」

なんかこの生徒の喋り方は「よつばと!」のよつばみたい。

「まったくそのとおりで。日本では英語を略すからねえ。パソコンとか」

「パーフェクトコンピューター?」

(このあと「パーソナル」の説明するも、ここでは略す)

スマホとか」

スマートフォン

「フォンは電話やね。スマートは日本語では細いって言う意味で使うけど、英語では賢いって意味。つまり賢い電話」

「まんまやん」

「賢い電話」を「まんま」と言える教養に脱帽 m(_)m

ヒカシューの21世紀ベスト1枚目

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というわけで、ようやく20世紀が終り、21世紀ベストを聴いています。

この文章は、私の記憶を元にあまり裏を取らずに書いていますので、憶え違いや誤りがあるかもしれません。バンド自身の座談会がアップされていましたので、こちらのほうがもちろん確かです。

21世紀ヒカシュー座談会|MAKIBRI|note

でもあえて私の個人的な感想を書いていくことにします。

1「入念」

この曲から始まっているのがとても嬉しい。最近のヒカシューのテーマ曲といってもいい曲だけれど、実を言うとずいぶん前から演奏されていて、編曲も変わってきている。

1990年代後半から演奏されていたのではないか。そのころの渋谷のラ・ママで聴いたような憶えがある。井上さんがまだいてドラムスは新井田さんだったのではないかと思うけれどほとんど自信はない。

初めのうちの「入念」は「念には念を入れ」の歌詞のところ何回繰り返すか決まっていなくて延々とやっていた。巻上さんの合図で次のシーケンスに移るのだった。ゼロ年代後半のライヴでは「生きること」の直後に佐藤さんのドラムをきっかけに突入することが多かった。

それにしてもこの歌詞このメロディでファンは大盛り上がりし踊りまくるのだからすごいと思う。シンセサイザーのリフとリズムセクションの走るようなノリがそうさせるのだろう。まあ、ヒカシューファンは変拍子の「プヨプヨ」でも踊るのだから特筆すべきことではないかも知れない。

ライヴで作られたりライヴで成長した曲は多い。このベストには入っていないけれどシングルの「あしたにかけた」は横浜のエアジンという小さな会場で三田さんがどこかのスタジオで見た楽譜にこんなのがあったと弾き始めたのへ巻上さんが即興で歌を付け、周りのメンバーも演奏し始めたのを目撃したことがある。

2「転々」

20世紀ベストはほぼリリース順だったけれど、この21世紀ベストは1枚目はゼロ年代2枚目は2010年代と分かれているけれど、曲順は必ずしも年を追っていない。

「転々」というアルバムが2006年に発売された。ちょうど再びライヴにも行くようになっていた時期で飛びつくように購入した。CDが出るのは10年以上のブランクがあった。発売日直前にライヴがあれば物販で買ってサインをもらうのだけれど、これはもらっていないからしばらく行けなかったときなのかもしれない。「入念」以降はだいたいサインをもらっている。

聴いてみてびっくり。最初から最後まで即興演奏で、聴いている感じだとヴォーカルもインプロヴィゼーションのようだった。このアルバムからニューヨークでの録音が恒例になったけれど、その最初のアルバムに清水さんは参加しておらず4人での演奏になっているからキーボードがいない。

これまでライヴでのインプロヴィゼーションは結構あったけれど、アルバムでは初めてだったのではないだろうか。いや「祈り」とか「偉大なる指揮者」はそうだったか。でも全編というのは初めてだった。

これ以降のライヴでも1曲目は必ずインプロヴィゼーションから始まるようになる。曲順を決めなくなったのはこの頃からだった。

3「グローバルシティの憂鬱」

今のメンバーになるひとつ前のメンバーの時によく演奏していたインターネットをモチーフとする曲。いまのようなブラウザによるネット環境というのはいつごろから始まったんだろうか。その前はパソコン通信ニフティサーブの中に巻上さんのフォーラムもあってそこから情報を得てライヴに行ったりCDを買ったりするようになったのがおそらく1990年代だった。

これも記憶違いなのかもしれないけれど、前のメンバーの最後のライヴと今のメンバーの最初のライヴをつづけて聴きに行った。前のメンバーはシンセサイザー吉森信でドラムが新井田さんだった。吉森さんは最近でもときどきゲストで参加する。そこへパーカッションで佐藤さんが加わっていた。次のライヴに行くと佐藤さんがドラムになっていて、清水さんがキーボードになっていた。

クレジットを見ると野本さんの名前もトリステンの名前もあるので、だいぶ前の録音であるようだが、リリースされたのは「生きること」よりあとだった。

4「脳千鳥」

これがその「生きること」に収録されている。私はむしろ「カモノハシ」の方が好きなんだけれど、どちらもインプロヴィゼーションから始まって歌のパートに接続するという構成になっている。ライヴでもよく演奏されていた。録音ではチェロの音が聴こえる。オキュン・リーだ。

5「恋とガスパチョ

これも前のメンバーの録音が元になっている。夏の定番曲で、この曲を聴いてから夏になるとガスパチョが欲しくなる。「みんなのうた」のために作られた曲だったが「ガスパチョが(こどもには)何かわからないから」という理由でボツになったらしい。「歌詞につくり方が書いてあるのに」と巻上さんは言っていたっけ。確かに「トマトときゅうりとピーマンににんにくとオリーブオイルで作る」と歌われている。そういえば「猫とロマン」も「みんなのうた」でボツになったものらしい。理由は「歌詞が難しい」だったらしい。

CDになる前からよく演奏されていて「珍無類」あたりは曲名も知らなかったがよく聴いた。ライヴでは演奏されていてもCDに入るのはかなり後ということはよくある。「サン・ラはピアニスト」なんかはだいぶ以前から時々演奏されているけれどまだCDに入っていない。

6「生きててよかったなあ」

「転々」に入っているやはりヴォーカルまで含めて即興の曲。ヴォーカルがリフになっているし最後もヴォーカルで終わる。

7「ベトベト」

そのヴォーカルの直後にこの曲のベースラインがいきなり聞こえてドキっとする。これは非常に大好きな曲。ライヴでもよく演奏してくれた。歌詞も身に沁みるし、ずれる歌や重たいコーラスもいい。今回のリマスターで三田さんと坂出さんのコーラスがより粒だって聞こえるようになった気がする。「グローバルシティの憂鬱」でも同様な感じがした。

タイトルは「プヨプヨ」「ドロドロ」「びろびろ」につながるオノマトペ系だけれど、曲調やテーマは特に繋がりはなさそうだ。

8「ユウトリウス」

「転々々」に入っている曲。このアルバム、タイトルからし「転々」の続編に思えて、しばらく購入をためらっていた。「ニコセロン」のシングルを先に聴いたのではなかったか。

「ユウトリウス」はライヴでもよく演った。名古屋のものすごく小さいところで、アコースティックの編成で聴いたこともある。これは即興ではなくて先に曲が出来ていたようだ。

9「デジタルなフランケン」

「グローバルシティの憂鬱」のテーマを引き継いだような曲だがインターネットの爛熟とともに深化しているように思える。「クリックで溺れてく」のところは何度聴いても泣ける。シングルヴァージョンもあるが、こちらは「生きること」で録音されたもの。

10「名もないところに前進だ」

「転々々」の曲で、これはインプロヴィゼーションのようだ。そういえばこのアルバムからテルミンの演奏が全面的にフューチャリングされるようになった。実際は1996年の「放射能」から導入されているし、ライヴでは以前のテルミンを使っていなかった曲でも演奏されていて音に厚みを加えている。

11「ニコセロン」

この曲のタイトルのすごいところはたとえばGoogleで検索してもこの曲のことしか出てこないところだ。つまりこのような単語は日本語にはないということ。そんな言葉を発明できるなんて。

CDではかなりデジタルな編曲に感じるが、ライヴだとドラムやベースの演奏がもっとグルーヴして、自然に踊りだしてしまう。

12「生きること」

ゼロ年代の集大成のような曲。ブレイクが多くて、初めて聴いたらどこで終るのか分からない。現に海外の演奏で、まだ途中なのに拍手が入ることが多いようだ。日本ではあまりそういうことがないのは、知っているというよりも様子を見ている人が多いからのような気がする。

何度も聴くとその構成の妙が分かってくる。演奏自体は毎回異なるが、構成は決まっていて巻上さんの指揮でシーケンスが変遷していく。ヴォーカルパートで3種類のシーケンスがあるし、それ以外にインプロヴィゼーションのパートもある。

歌の良さとインプロヴィゼーションの心地よさと違和感のある演奏がすべて感じられる名曲だ。

ライヴではこの曲の後に「入念」が演奏されることが多い。その意味ではこの1枚目は円環構造をなしていると言える。つまりいつまでも演奏は終らないのだ。

ヒカシューの20世紀ベスト2枚目

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1「人間の顔」

20世紀ベストの2枚目はこの曲から始まる。アルバム「人間の顔」には私が渋谷のエッグマンで聴いていた曲がたくさん入っている。

「人間の顔」は当初、沢田研二に依頼されて書いたらしい。けれど没になったので自分たちのアルバムタイトルとした。沢田研二が「6番目のユウウツ」などでロック路線を走っていたころだと思う。いい曲なのにね。カッコイイと思わなかったのかな。

野本さんのサックスが上手すぎる。「人間の顔は面白い」「素晴らしい」「凄まじい」の三段活用。

2「ゾウアザラシ」

これは野本さんの作曲で、大名作。ゾウアザラシが「私の部屋」を侵食してくる恐怖を歌っている。ゾウアザラシがなんの象徴なのかはよくわからない。巻上さんのヴォーカルはどこかユーモラスだ。

この系統の曲では「ハイアイアイ島」があるが、このベストには入っていない。「ハイアイアイ島」には原作があって、原爆実験で失われた架空の島の生態系を書いた本で、ライヴではその中のドイツ語の詩を三田さんが朗読することで演奏に入るというパターンがあった。

そういえば「水に流して」に入っている「岩」は、大江健三郎の「同時代ゲーム」が原作のような気がする。井上さんのシンセサイザーが決まっている曲だった。「パイク」はジャリが原作だったし、ほかにもそういう曲がいくつかある。「次の岩につづく」はタイトルだけらしいけれど。

3「何にもない男」

アルバムで聴いたときはそれほど印象に残らなかったのだけれど、ライヴでやるとギターのリフがものすごく印象的だ。「ヒカシューヒストリー」にはこのころのライヴ音源が入っている。バスクラがギターに絡むのだけれど、往年は野本さんが、最近は清水さんが演奏している。

4「天国を覗きたい」

ヒカシュー独自のクリスマスソング。といってもサンタクロースが殺される話。

野本さんの曲であり、野本さんのサックスが鋭く響いている。

野本さんは80年代半ばから90年代後半までずっとメンバーだったが、そのあとお亡くなりになった。追悼の意味もあって毎年クリスマスライヴでは必ず演奏される。

チャラン・ポ・ランタンと共演したヴァージョンはシングル「チャクラ開き」に収録されている。小春さんのアコーディオンと巻上さんの口琴が響き合っている名演だ。これもクリスマスライヴで披露されたっけ。

5「丁重なおもてなし」

このあたりから私はライヴから遠ざかった。それまで東京に住んでいたのが地元に帰ってきたからというのが最も大きい理由だった。この曲もライヴではじめて聞いたのは2000年前後だと思う。

巻上さんがコルネットを吹いている。このベストでは初のお目見えだが、収録されていない曲ではもっと前から演奏していた。80年代後半のエッグマンでも。

6「キメラ」

遺伝子操作の歌。この曲から30年近く経ったいまでは、遺伝子組み換え種子で大儲けをしている大企業があるし、それへの批判も大きくあるのだけれど、あいかわらず「誰もが生活を理由に無視」し続けている。人類が滅びるのが先かヒカシューがいなくなるのが先か。まあ多分、私が死ぬのが一番早い。

「背中には羽が心には沼が」ものすごく響く歌詞だ。

アルバム「丁重なおもてなし」に入っている曲で一番好きなのは「わが国」だけれど、このベストには入っていない。ほかの曲とかぶるという理由もあるだろうけれどライヴでも一度も聴いたことがない。

「祈り」が入っていないので大友さんの曲がひとつも入っていないことになる。

また、このアルバムの途中でドラムの谷口さんが急逝している。

7「うたえないうた」

これは最近カズレーサーが薦めたことで再び売れ始めた筒井康隆の「残像に口紅を」が原作だと思う。そこからさらに昇華して巻上さんらしい深みとセンチメンタルが両立する素晴らしい詩と曲になっている。曲は坂出さん。

このあたりがヒカシューの最初の爛熟期だろう。

8「びろびろ」

アルバム「はなうたはじめ」からドラムにつの犬が加わってジャジーな感じになってくる。ピアノソロが聞こえるなあと思ったら高瀬アキさんだった。

この曲も最初はそんなに感心しなかったのだけれど、ライヴでは欠かせない曲となった。「ピース」のレスポンス、みんなでやろうね。

9「もったいない話」

この曲もかなりライヴで聞いた。不規則な構成の曲。これの発展型が「生きること」ななるんだろう。巻上さんの右手の動きは「振り付け」なのか「指揮」なのか。

10「虫の知らせ」

この曲も野本さんのサックスが美しい。コルネットとの掛け合いもいい。

11「あっちの目こっちの目」

このアルバムから井上さんが脱退して、トルステン・ラッシュが加わるが、私はトルステンをライヴで見たことがない。井上さんはその後もときどきゲストという形で参加する。客席で会うこともある。いまは幼稚園の園長先生で、その幼稚園では巻上さんのライヴがあったりする。そういえば最近、井上さんと山下さんの「イノヤマランド」がヨーロッパを中心に売れ出して、日本でのライヴも何回も行われている。

ローレン・ニュートン(ヴォイス)がゲストで参加していて、この曲は彼女のための曲のようだ。少し前に「ジャズアート仙川」に来日して、そのときももちろんこの曲をやったはずだが、私は行けなかった。

12「石仏」

ハンジー・ノバクがエレキバイオリンで参加している。実はヒカシューとヴァイオリンの相性はとても良く、ライヴのゲストにヴァイオリンが入っているときは実に良い。アレクセイ・アイギの演奏は横浜ジャズで聴くことができた。太田恵資さんが加わった演奏も聴いたことがある。

13「さなぎ」

いま聴くと前奏のヴォイスがすごく怖い。このベストはすべてオノセイゲンによるリマスターなので、「いま」の音になっているし、聞こえていなかった音が粒立ったりしている。

「さなぎ」というタイトルの筒井康隆の短篇があったけれど、どんな内容か忘れた。

14「不思議をみつめて」

ライヴに行かなくなっていてもCDはちゃんと買っていて「超時空世紀オーガス02」のサウンドトラックも当然のように持っている。あのころはどうやって発売情報を得ていたんだろう。今みたいにインターネットで簡単に検索できるような時代ではなかったし、ニフティサーブのようなパソコン通信にはまったのももう少し後だったと思う。たぶん実際にお店に行ってチェックしていたんだろう。月に一回くらい日本橋の電気街に出てCDやLDを買っていた。「マクロス」などのLDも随分持っていたけれどプレイヤが壊れてしまって全て売ってしまった。「オーガス」はレンタルヴィデオで見た記憶があり、そのオープンエンディングにやきもきした。「02」のほうはまだ観たことがない。

アニメの主題歌なんだけれどすごくいい曲だし、変だし、歌の入っていないほかの効果音楽を聴くとインプロヴィゼーションのエッセンスを集めたすごいものになっている。

いまは「不思議をみつめて」というタイトルでリマスタリング・再発売されている。

15「20世紀の終りに 1996ver.」

「1996ver.」というのは「かわっている」というセルフカヴァーアルバムのヴァージョンである。このころのメンバーのものはあまり音源が残っていない。キーボードに吉森信が加わり、ドラムスが新井田耕三に変わっている。

メロトロンの音も聞こえるような気がするんだけれどクレジットにはないからサンプラーなのかな。

16「パイク 1996ver.」

「20世紀の終りに」は、「かわってる」ヴァージョンではなく原曲に近いかたちでライヴでも演奏されるが、「パイク」はこのヴァージョンに近い形で演奏されている。とはいえ「ヒカシューLIVE」(1991)ですでに現在の形に近くなっている。

ラストで巻上さんのホーメイが聞こえる。テルミンはまだ聞こえない。1998年の「放射能」のカヴァーで初めてお目見えするがライヴではいつごろからやっていたのか憶えていない。

前回のブログの最後に「成績が上がるかどうか」について書いたのを読んだ人から「民族の祭典」(巻上さんのソロアルバムだけれどメンバーはほぼ「うわさの人類」のころのヒカシュー)の帯を思い出したとの連絡があった。「聴く奴の偏差値が暴かれる!」と書いてあった。趣旨は違うがまあそういうことです。趣旨といえばそもそもこのブログにこんなことを書いている時点で趣旨が違うわけだが、でもヒカシューを聴けば成績の上がることもあるよ。